バイオグラフィーワーク
~人生の隠された意味を求めて~
バイオグラフィーという言葉は『伝記』と訳されていますが、いわゆる有名な人の事だけではなく、
私たち一人ひとり、誰もが自分の生きた足跡としてのバイオグラフィーを持っています。
どんなことを覚えていますか? 忘れてしまったこともありますね。
小さなときに好きだった場所はどんなところだったでしょう。
どんな家族に囲まれて、どんな風に学んでいきましたか?
自分で無意識のうちに歩んできた道もあるし、選んできた道もある。
その時、私はなにを感じ、なにを考えていたでしょう。
小さな子が、大きくなって自分のことを考えるようになり、少しづつ一人で歩んでいき、色んな疑問や辛い経験をしたり、反抗期もあった
でしょう。自分の心の中のたくさんの引出しを作ってきましたね。
自分のことがからなくなるような経験はありましたか?
自分が歩んで流れの中で、忘れてしまいといようなことさえも本当は深い意味を持っていて、生きる道のヒントとなるとしたら
バイオグラフィーワークはアントロポゾフィー(人智学)の世界観、人間観を土台に自分のバイオグラフィーを使って、
ゆっくりと向き合っていきます。…そうゆっくりと、準備ができたことだけ…。
守られた空間の中で、約束事の中で安心して向き合えるのです。
バイオグラフィワークの独特の手法、描画や粘土などの創造的な
芸術体験とともに、自分の人生に様々な角度から光を当てていきます。
もう一つの大事な特徴はグループワークです。シュタイナーは目的を持ったグループにはグループの天使が見守ってくれている といいます。「同じ船で旅をする仲間」とも表現される”縁”を持った和の中のグループワークは、一人では見つけられない導きを感じます。
『対話』『傾聴』…心からの言葉が、相手に届き、また、相手の言葉もすっと心の中に入ってくる。そんな「出会い」から 生まれるものがあるのです。
現代の孤立する心(魂)の意味を明らかにし、新しい関係性に目覚めてゆくことを目ざす社会的なグループワークなのです。
ルドルフ・シュタイナーがその多くの講義や著書の中で、繰り返し語った言葉があります。
自分自身を知りたければ、世界(宇宙)を観察するがいい。
世界(宇宙)を知りたければ、自分の魂の深みを観察するといい。
個人と世界(宇宙)の深い結びつきを示すこの言葉に、バイオグラフィワークが目指すものが集約されているように思えます
人生で経験して生きたことに、自分自身で意味を付けています。人は同じ体験をしたとしても、その人その人で全く違う意味を持ちます。
自分自身で「意味をつけ」それを繰り返して、私が創られていきます。魂が成長し、私自身が私の人生を歩みだす28歳以降に、もう一度私自身が付けた経験の中の「意味」を、違う角度で見てみたら、きっと新しい扉を開くことができるでしょう。
自分自身を見つめることは、怖いことかもしれません。そんなに深く考えなくても過ぎて行ってしまう時代。たくさんの魅力的な誘惑もあります。でも、ひとつづつ新しい発見をするたびに、どう感謝していいかわからないくらいの暖かな想いが込み上げてくるのです。
コツコツと続けていくこと、相手を信頼し、守られた場所を信頼し、そして自分自身を信頼する…バイオグラフィワークの技法と、場所と一歩踏み出す勇気が、それを可能にしてくれることでしょう。